賃貸住宅経営を始めようと考えている投資家予備軍にとって二の足を踏ませるのが、物件を購入する際の資金調達であろう。金融資産がふんだんにあってキャッシュで物件を購入できる人はそうはいない。
1物件目を購入してうまく運用できて、キャッシュフローも計画通りに出せている人は、その実績を基に銀行や信金などの金融機関に判断してもらえるが、最初の一歩のハードルは高い。
銀行の融資姿勢に時代背景も大きく影響する。世界金融危機の発端になったリーマンショック後は上場大手企業や銀行など信用上問題のなさそうな人でも融資審査を通らないケースが珍しくなかった。
金融危機前は不動産投資向けに積極的に貸し出していたが、バブル世代で大手に勤めていた個人不動産投資家の1人は、「最初の融資は苦労した。地方銀行なども含めて借り入れを申し込んだが、なかなか首を縦に振ってもらえなかった」と振り返る。
これとは別の個人投資家は、女性専用シェアハウスを舞台にした投資不動産向け不正融資を受けて、金融庁が厳しい姿勢を打ち出したことで「各行から新規の貸し付けをできない、とまで言わないが、実質厳しかったのを覚えている。貸してくれるのは高金利のノンバンク系くらいだった」と話す。
信用照会は1カ月間だけでも膨大に上る
では、実際に銀行が審査をするときにどこを見ているのだろうか。勤め先、年収、借金の有無などを見ていることはわかるが、どこまで見られているのか。
信用情報を取り扱う会社は複数ある。主なものは3団体。割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関「CIC」、貸金業法に基づく指定信用情報機関である株式会社日本信用情報機構「JICC」、銀行が加盟している全国銀行個人信用情報センター「KSC」である。
JICCは6月23日に「信用情報提供等業務に関連する統計」を発表しているが、同機構の加盟会員数は1303社に上り、このうち811社が加入貸金業者である。
加盟会員からJICCへの総照会件数について直近の5月は1052万件となっている。このうち貸金業者からの照会件数が821万件となっている。1カ月だけでも膨大な信用照会が行われていることがわかる。
KSCに加盟できるのは、①銀行②政府系関係金融機関またはこれに準ずるもの③信用保証協会法に基づいて設立された信用保証協会などだ。個人に関する与信業法を営む法人は、①と②の推薦を受けたクレジットカード会社や保証会社などが加盟している。
KSCのホームページを見ると、銀行ローンで3カ月以上滞納して保証会社の代位弁済を受けると、クレジットカードやノンバンク融資の審査が通過しないと明記している。
信用情報大手3団体を銀行は全て利用している
元銀行員のA氏は、「各行とも信用情報を見て融資するかしないかを審査する。信用情報はかなり詳しくわかる。おそらくどの銀行でも信用情報大手の3団体を使って情報を入手しているだろう」と話す。
収入と借金はすべてわかる。融資に引っかかるのは、クレジットカード延滞する審査に通らない。カードローンを使っていると引っかかることもあるが、使っているだけで延滞もなければ審査に引っかかることはない。
ただ、カードローンを使っている人を見ると、他のところで借金している人が少なくない。クレジットカードでリボルビング払いがあったり、キャッシングなど、ほかのいろいろなところに紐づいているのが利用者の特徴だ。
A氏は、「それらを総合的に考えて融資審査が通らないケースがほとんどだ。カードローンのみを使っている人で滞納がなければ問題ないが、そうした人を見かけることは多くはない」としている。
また、街金の借り入れ情報は、「それだけだとわからないケースがある。が、そうした人たちは普通に借り入れできない属性なので他に借金が抱えている。例えば、街金で借りていて、それを返すのが苦しくてカードローンを使うといったところから情報がわかる」という。個人の借り入れ状況は、過去も含めて銀行など金融機関がしっかり押さえている。
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健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))